ソニーの初代ウォークマンが発売されたのは1979年。私が大学を卒業した年だった。
定価は33,000円。初任給が10万円程度だったから決して安くはなかったが、発売されてそれほど間を置かずに買ったと思うが、どこでいつ買ったのかは覚えていない。たぶん天神のベスト電器ではなかったか。
自宅でラジオから聞こえてくる音楽に耳を傾けたり、ステレオの前でレコードに針を落としてじっくり聴くというのが音楽の楽しみ方だった。
履歴書に「趣味はレコード鑑賞」と堂々と書いても違和感のない時代だった。
それがウォークマンを買ってから外で気に入った曲を聴くという楽しみ方が出来るようになった。
それまでカセットデッキの使い道はFMラジオのエアチェックをしたり、大学のサークルで使う番組を作ったりするのがメインだった。
ウォークマンを買ってから、それまで家の中でしか聞けなかったレコードをカセットにダビングし、外出先で聴くようになった。
いま思えばウォークマンに付属していたヘッドフォンは貧弱で、けっして良い音ではなかったと思う。それでも自分が好きな音楽を外出先でいつでも聴けるというのは画期的だった。
初代ウォークマンのCMのキャッチフレーズ、「歩くステレオ。ステレオが部屋を出た」を地で行くスタイルを実践していた。
最近読んだ「あなたがあの曲を好きなわけ」にも、ウォークマンの登場によって音楽の聴き方が劇的に変わったと書かれていた。音楽との向き合い方が積極的に聴く音楽から、何か他のことをしながら映画の背景音楽(サウンドトラック)のような(消極的な)聴き方に変化したという。
ウォークマンからアイポッド、そしてスマホと再生機器は変わり、レコードのダビングからCDのリッピング、そしてストリーミングと音源も変化した。
いまや多くの人が外出先や通勤通学の交通機関の中でイヤフォンでストリーミングで音楽や動画を楽しんでいるが、それはウォークマンの登場が契機になったからだ。
ステレオの前に座って音楽に耳を傾けるというを聴くということがなくなっていた。
新しいスピーカーに換えて、CDで一曲一曲の音楽を味わうように聴くようになって、かつてにように音楽や音そのものの良さを実感するようになった。
ストリーミング・サービスは便利だが、時として気に入っていた音楽が突然聴けなくなったりすることもある。音質もCDに比べると明らかに落ちる。そんなこともあってCDをまた買い始めた。
そしてその音楽を外でも楽しみたくなった。が、スマホに保存して聴くには音質やメモリーに難がある。
そこで音楽再生に特化したウォークマンを45年ぶりに購入することにした。同時にshureのイヤフォンを買い音楽を楽しむことにした。